兄弟が生前贈与を受けたか調べる方法
相続税申告で税務署から狙われやすいポイントは、生前贈与の計上もれです。
死亡前3年以内(令和9年1月1日以後の相続については3~7年)の贈与は、相続税の計算対象となります。
相続税申告は他の相続人と共同して申告することが一般的ですが…
もしも、兄弟が「贈与を受けていた」ことを黙っていたら?
贈与分の相続財産を漏らしたまま相続税申告をしてしまうかもしれません。
プロはそのような事態に備えて、事前に税務署から「生前贈与の情報」を入手して相続税申告書を作ります。
本記事ではその方法を解説します。
▼目次
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49条開示手続き
税務署から生前贈与の情報を入手する手続き それは、
相続税法第49条第1項の規定に基づく開示請求書(49条開示請求)
です。
この手続きを行うと、このような開示書が入手できます。
この開示書からは、税務署が把握している贈与税の実績を知ることができます。
具体的には、
開示対象者(他の相続人など)の
- 亡くなる前3年以内に贈与で受けた金額の合計
- 相続時精算課税制度の適用で贈与を受けた金額の合計
が分かります。
該当がなければ「該当なし」と記載されますので、他の相続人が贈与を受けたか否かが判明します。
ただし注意すべきは、生前贈与に係る金額の合計が分かるだけという点です。
いつ、何の贈与によるものなのか、具体的な内容までは開示されません。
49条の開示結果に金額が記載された場合
相続税申告の様式に、過去の贈与について記入する欄があります。
だれが、いつ、何を、いくらで贈与されたか詳細な記入が求められます。
そのため、49条の開示請求だけでは情報が不足します。
また、開示対象者が複数人の場合、開示書に記載される金額は、その開示対象者全員の合計金額である点にも注意が必要です。
AさんとBさんが開示対象者だったとします。
開示結果がこのように出てきた場合
AさんとBさんの合計で、亡くなる前3年間に9,999,999円の贈与があったという見方になります。
あくまでも合計なので、Aさんが0円(もしくはBさんが0円)の可能性もあります。
開示対象者が複数人のときは、いつ、何の贈与を受けたのかに加え、誰が贈与をされたのかという情報も不足します。
開示書に金額が記載された場合は、別途内訳を特定する手続きが必要になります。
開示書の金額の内訳を確認する
内訳を確認する方法は2つあります。
その1
他の相続人に贈与税申告書などの控えを探してもらう
頼みづらいかもしれませんが、49条の開示結果を見せて、贈与税申告書や相続時精算課税届出の控えを探してもらいましょう。
その2
閲覧申請(申 告 書 等 閲 覧 申 請 書)を行う
控えがない場合は、「申告書等閲覧申請書」を税務署に提出することで、申告の控えを見に行くことができます。(写真撮影も可能)
ただし、代理人が申告内容を確認するときは、申告した本人の委任状や印鑑証明が必要になります。
申告した本人が内容を確認する場合は、申請書と本人確認書類(運転免許証など)で確認することができます。
他の相続人から協力が得られない場合
相続人の中に、過去の贈与について調べられることを拒む方がいるケースがあります。
その場合は、相続税申告を共同で行わずに単独で行うことを検討しましょう。
例)相続人が3人(A、B、C)で、AがBCと不仲の場合
AはBCについて49条の開示請求で生前贈与の金額を把握します。
合計値を課税価格の計算に織り込み、単独で相続税申告を行います。
まとめ
「49条の開示請求」では、税務署が把握している他の相続人の生前贈与の情報を入手することができます。
入手できる情報は、生前贈与の合計金額になりますが、相続財産の計上もれを防ぐうえで非常に有用です。
ご自身で相続税申告をされる際には、税務署が把握している情報を入手してから進めると、自信をもって提出できるかと思います。
その際には、本コラムをお役立ていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、またのコラムをお楽しみに!