相続で財産をもらったら収入になる?確定申告は必要?扶養外れる?
相続により財産を受け取ると「収入が増えて税金がかかるのでは?」「扶養から外れる?」と心配になる方も多いでしょう。今回はその疑問について解説します。
目次
相続で財産をもらったら収入が増えて税金がかかる?
先に結論を申し上げますと、
「相続で財産をもらった時点」に相続税が、「その後の時点」において収入が発生します。
具体的に時点ごとに分けて解説いたします。
相続で財産をもらった時点
相続で財産を取得した際にかかる税金は相続税です。
相続税は、遺産金額が下記の計算式(基礎控除)を超えている場合、税務署に対して相続税申告が必要になります。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
遺産金額が基礎控除を超えているからといって、ただちに納税が必要になるわけではありません。
特例の活用などによって納税額が0円になることがあります。
遺産金額が基礎控除を下回るか、超えていても相続税がかからない場合は、相続で財産をもらった時点で税金は課税されません。
なお不動産については、相続人が取得した場合は不動産取得税もかかりません。
相続した後の時点
相続が完了すると、預貯金や不動産、株式などがご自身の財産としてプラスされます。
「単純に財産が相続前より増えたから、収入になるのでは?」と心配になりますよね。
財産が相続で増えただけでは収入にはなりません。
ただし、相続で取得した財産を運用して得たお金は収入になります。
たとえば以下のようなケースです。
▼預貯金
預けたお金に利息がつけば、その利息が収入になります。
ただし、利息は銀行側が税金を差し引いて納税してくれるので、確定申告の必要はありません。
▼不動産
相続した不動産を誰かに貸し出して収入を得た場合は、その賃料が収入となります。
賃料収入がある場合、確定申告が必要となるケースがあります。※
また、不動産を売却した場合は確定申告が必要になります。
▼株式
配当金や株を売却して利益が出た場合は、収入となりますが、特定口座(源泉徴収あり)で管理していれば確定申告は原則不要です。
※不動産収入について確定申告が必要かどうかは、不動産の収入と経費の金額や他の収入状況によって決まります。
相続したら扶養から外れますか
扶養には2つの考え方があり、それは、税金上の扶養と社会保険上の扶養というものです。
相続で財産をもらっただけでは、税金上も社会保険上も扶養から外れることはありません。
しかし、相続した財産から収入が発生する場合は、扶養から外れる可能性があります。
税金上の扶養
主に不動産収入が影響します。
このほか有価証券の配当金、売却益が影響することがありますが、特定口座(源泉徴収あり)を使い確定申告をしなければ影響はありません。
社会保険上の扶養
どこまでの収入を扶養の判定に取り込むのか、加入している保険組合の規定によって異なるため、事前に確認が必要です。
パートで働いている奥様が相続で賃貸物件を相続した場合について
一般的なご家庭を想定し、税金上の扶養から外れるかどうかの目安を一覧にしました。
税金上、扶養というのは配偶者控除や配偶者特別控除が受けられることをいいます。
▼前提条件
【旦那様】
・給与所得者(年収1,095万円以下)
【奥様 】
・年齢 70歳未満(控除を受ける年の12月31日時点での年齢)
・給与所得者(パート)
・相続で賃貸物件を受け継いだ。
収入 | 計算式 | 備考 |
---|---|---|
不動産収入 | ①不動産収入-必要経費 | 青色申告の場合は①からさらに10万円・55万円・65万円のいずれかを控除 国税庁 No.2072 青色申告特別控除 |
給与 | ②給与所得 | 給与所得は下記のサイトで計算。 ※リンク先の下部に計算できるボックスがあります。 国税庁 No.1410 給与所得控除 |
合計①+② | 48万円以下 | 扶養の範囲内 旦那様で配偶者控除が満額(38万円)受けられる |
48万円超~133万円以下 | 段階的に控除額が減少 旦那様で配偶者特別控除が受けられる (控除額が所得に応じて38万円→3万円と徐々に減少) | |
133万円超 | 扶養から外れる 旦那様で控除が受けられない |
ちなみに、「収入が103万円を超えると扶養から外れる」というのは、収入が給与のみの方に対する目安です。
相続により別の収入が生じた方は、103万円の基準が使えませんのでご注意ください。
まとめ
相続財産を受け取ること自体は収入にはならず、扶養にも影響はありません。
ただし、相続財産から収益が発生する場合は、その収入が確定申告や扶養判定に影響を与えることがあります。
個別の状況に応じた判断が必要ですので、心配な場合は専門家に相談することをおすすめします。