遺産相続した時の預貯金の分け方
遺産分けの話し合いがまとまり、預貯金を各相続人に分配するときに「どうやって分配すれば良いか」と悩むことがあります。
- 亡くなった日と分配する日の残高が一致しない…差額はどう調整する?
- 一か所に集約してから分配してはマズい?贈与税がかかる?
- 相続税の支払いは遺産から支払う?それとも相続人個人口座から行う?
など、分配の際に直面する疑問について、時系列別に解説します。

どう調整する?亡くなった日と分配する日の残高が一致しない場合
遺産分けの話し合い(遺産分割協議)は通常、故人が亡くなった日の残高を基準に行います。
ところが、すぐに銀行に亡くなったことを通知しなかった場合、死亡後もしばらくの間、口座の出入りが続いてしまうことがあります。
クレジットカードや公共料金の支払・葬儀費用や当面の生活費の引き出しなどで、仮に残高が減っていたら、この差額はどのように調整すればよいのでしょうか。
相続人同士の話し合いで決める
この差額についても、相続人間の話し合いにて決めます。
例えば、相続開始日に7,000万円の残高があり、遺産分割協議の後、分配する日には6,800万円の残高となっていたとします。
遺産分割協議は、7,000万円の預貯金を相続人Aと相続人Bがそれぞれ、2分の1づつ分けることで合意したとします。
減少した200万円について、AとBで話し合い、半分ずつ負担しようと合意したのであれば、
分配する金額は、
A 7,000×1/2-200×1/2=3,400
B 7,000×1/2-200×1/2=3,400
となります。
相続人同士が合意しているのであれば、どのように負担しても問題ありません。
Aが全額負担で、Bが負担しないと話し合いがまとまったのであれば、
A 7,000×1/2-200=3,300
B 7,000×1/2=3,500
でも構いません。
遺産分割協議の際には、亡くなった日の後、分配までの口座変動についても相続人間で話し合って決めておきましょう。
一か所に集約してから分配してはマズい?贈与税がかかる?
遺産分割協議で、「〇銀行の預金はA、×銀行の預金はBが取得する」とした場合は、各人が銀行へ赴き、相続手続きをすれば問題ありません。
しかし、「〇銀行、×銀行の預金について、AとBがそれぞれ2分の1の割合で取得する」とした場合はどのように分ければよいのでしょうか。
〇銀行へ行き、半分をAに、半分をBに振込み、×銀行も同様に行うとしたらとても煩雑です。
一旦、Aが空の口座を用意し、その口座に各残高を集約してから、最後に2分の1をBに送金すれば手続きが楽ですよね。
ところがこのやり方をすると、一見して「AがBにお金を渡した=贈与した」ように見えてしまいます。
外見上は「贈与」?でも大丈夫
ご安心ください。
この場合、一か所に集めて送金しても贈与として扱われません。
なぜなら、遺産分割協議に従って分配がされているからです。
逆を言えば、遺産分割協議の裏付けがないと贈与になる可能性があります。
対策として、遺産分割協議書には次のように遺産の受け渡し方を記載しておくと良いでしょう。
【記載例】
Aは相続人を代表して次の預貯金の解約、払い戻しを行い、その2分の1を別途Bが指定する口座に振り込んで引き渡す。
預貯金
〇銀行 △支店 普通 9999999
×銀行 ▲支店 普通 8888888
このように記載しておけば、あとから税務署に確認された場合でも、遺産分割の一環であることを説明しやすくなります。
相続税の支払いは遺産から支払う?それとも相続人の個人口座から?
相続税が発生した場合、相続税の支払は遺産からでも、相続人個人の口座からでも、どちらから支払っても問題ありません。
ただし、遺産から支払える場合は、遺産分割協議が終わり、預貯金の分配が完了した後になります。
また、相続税はきちんと各人が、各人の相続した預貯金から支払ってください。
たとえば、AがBの相続税を代わりに支払った場合は、相続税分をBがAからお金をもらって納税したのと同じですから、Bに贈与したことになり、贈与税の対象となるので注意が必要です。
相続税を支払うために行ったことが贈与税の対象になると、最悪ダブルで納税となってしまいますので、納税のしかたには注意してください。
まとめ
- 遺産相続で預貯金を分配する際には、分配日の残高が相続開始時(亡くなった日)と異なる場合は相続人同士で話し合って調整する。
- 一時的に預金を一つの口座に集約してから分ける場合でも、遺産分割協議に基づく処理であれば贈与税はかからない。
- 相続税を遺産から支払うには、預貯金の遺産分割協議と相続手続きを完了させること。
- 相続税の支払いは各相続人が自分の相続分から支払うこと。他人の税金を肩代わりすると贈与税のリスクがある。
上記のポイントを参考に、円滑な預貯金の分割にお役立ていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。それでは次のコラムをお楽しみに!