【親の相続準備】遺言よりも贈与を選択する理由
相談者のほとんどが贈与を選ぶ
石川県金沢市のなほ税理士事務所、税理士の川﨑です。
相続に関するご相談の中で、「両親に遺言を書いてもらいたい」というものがよくあります。
そのようにお考えになった経緯を尋ねると、例えば次のようなことをお答えになられます。
- いつ亡くなるかわからない年齢になった。
- ケガや病気で入院したことがきっかけで、相続について考えるようになった。
- 普段の生活は自分や妻が面倒を見ていて、金銭的にも負担が大きい。遠方にいる兄弟は特に協力していないのに、財産だけ均等に分配されるのは納得できない。
- 両親は自分に財産を譲りたいと言っている。
お話を伺い、「ある提案」を行うと当初は遺言の相談だったはずが、結果としてほとんどの方は遺言を作成されません。
そのような結果になるのは、
- 遺言の作成手続きを面倒、大げさに感じる。
- 「ある提案」の方が都合が良い。
となるからです。
この「ある提案」とは‥‥
‥‥ずばり贈与です。
「え?」と思われた方もいらっしゃると思います。
贈与によって財産を移すと税金がかかってしまうと思い、選択肢から外していた方が多いのではないでしょうか。
実は、贈与にもいくつか方法があり、うまく活用すれば税金を払わずに財産を移してしまう方法があります。
本記事では、その方法をご紹介します。
贈与には2通りある
「年間110万円までの贈与なら税金はかからない」という話をどこかで聞いたことはないでしょうか。
世間一般に知られているこの贈与のことを税金の世界では「暦年贈与」といいます。
しかし、メジャーな「暦年贈与」とは別に、もう1つの贈与があることはあまり知られていません。
それは「相続時精算課税」という贈与の方法です。(長いので以下、「精算課税」と略してご説明します。)
「精算課税」では最大2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。
2,500万円まで贈与しても税金が課税されないのであれば、まとまった財産を無税で移すことができるのでとても都合が良いですよね。
精算課税と遺言の比較
さらに、精算課税を活用した贈与は、遺言(公正証書)と比べると、主に次の点が優れています。
- 公証人役場に行く必要がなく、手続きが簡素
- 贈与したタイミングで財産の持ち主は移るので、両親が元気なうちに結論が出せる
- 実行するための手数料が安い
遺言よりもはるかに楽でコスパが良いので、精算課税の贈与を提案すると、相談者のほとんどの方が遺言よりも贈与を選択されます。
遺言よりも贈与で解決することがある
遺言は世に周知されているため、皆様がまっさきに思い浮かべるのも無理もありません。弁護士や司法書士などの専門家も、「相続準備といえば遺言」と提案することが一般的です。
しかしながら、遺言以外の方法がご自身やご家族にとってベストになることもあります。
今回ご紹介した「精算課税」については、2024年以降、更に使いやすい制度に改正されるので知っておいて損はありません。
ただし、精算課税の制度は活用方法を誤るとかえって税金がかかることがあります。
この点、遺言を選ぶべきか、精算課税を選ぶべきかの判断は自分では難しい場合があります。
特に精算課税との比較は、専門家の中でも税理士の得意とする分野になります。
弊所には、弁護士や司法書士に相談したものの、遺言以外に有益なアドバイスが得られず、他に良い方法はないですかと相談に来られる方が多くいらっしゃいます。
もし、そういったお悩みを抱えている場合は、相談相手に「税理士」を選んでみても良いのではないでしょうか。
親の相続準備の選択肢として「相続時精算課税」を活用することをぜひ検討してみてください。