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2023/08/10

遺言は自分で書いても大丈夫?私が自筆証書遺言で遺言を書いた理由

こんにちは、なほ税理士事務所の税理士、大崎です。

突然ですが、私、遺言を書いてみました!

遺言と聞くと、「えっ…早まらないで!!」と言われてしまいそうですがそれは誤解です!
「遺言」は、自分の亡くなった後の財産の引継ぎ先を書いておくものです。

私が遺言を書いた理由は、相続に携わる身として、自分が遺言を書かずにお客様におすすめすることはできない…と常々考えていたからです。

遺言書を書く方法としては一般的に、「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」のいずれかで検討されます。
巷のブログや書籍では「公正証書遺言」と呼ばれる方法が、確実だとされますが、はたして本当でしょうか。

私は最終的に「自筆証書遺言」という方法で書くことにしました。

今回のコラムではその理由を公開したいと思います!

公正証書で書くか、自筆証書で書くか?

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の違いは、大まかに「誰が作成するのか」という点になります。

  • 公正証書遺言は、証人2人の立ち合いのもと、公証人が遺言をする人に確認をとりながら遺言書を作成するというものです。
  • 自筆証書遺言は、紙とペンで遺言を書く人が遺言書を作成するものです。

公正証書遺言は公証人という専門家が遺言作成に関与しますので、遺言が無効になるリスクが少なくなるというメリットがあります。
ただし、公証人に支払う手数料が1回につき数万~数十万円かかる、死亡時に相続人に通知されないなどのデメリットがあります。

一方で自筆証書遺言は、紙とペンさえあればいつでも書けるので自分一人ですることができます。さらに法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用して遺言書を預けておけば、3,900円の払い切りの保管料で、死亡後に相続人への通知もしてくれます。
ただし、無効にならない遺言を書けるかという点がデメリットになります。

法務省民事局 自筆証書遺言保管制度のご案内 p.1より (マーカーは筆者)

両者を比較すると、自筆証書遺言は手軽さやコスト面においてとても良いのですが、「無効にならないか」という点に不安が残ります。

しかし、私は次のように考えてこの不安を解消しました。

そもそも遺言が無効になるときとは?

そもそも遺言の「無効」はどのような場合に起きるかと考えました。

大きく分けて、3つのケースがあります。

  1. 遺言書の形式に不備があるケース
  2. 遺言書の内容に相続人が不満になるケース
  3. 遺言者の意思に問題があるケース

1. 遺言書の形式に不備があるケース

遺言書には法律上決められた形式があり、その要件を満たしていないものは無効になります。たとえば、日付の記載や署名が書かれてない、どの財産を引き継がせるのかが曖昧なケースなどです。

こうした問題に対処する方法として、自筆証書遺言保管制度の利用があります。
この制度では、遺言を預け入れる際に法務局の登記官が形式的な不備を確認してくれます。

遺言を書く際には、法務局のパンフレットや書籍を参考にして遺言の書き方を確認し、遺言を預ける際に登記官のチェックを受けることがおすすめです。

これによって、遺言書の形式的な問題を事前に防ぐことができます。

2. 遺言の内容に相続人が不満になるケース

もし、特定の相続人に「全財産を相続させる」といった内容の遺言書を残した場合、他の相続人は一切財産を受け継ぐことができないのでしょうか。

このような場合は「遺留分」と言って、他の相続人は最低限の財産を引き継ぐ権利があると主張することができます。
遺留分をめぐり相続人間の対立が起きると、遺言どおりに財産が分配されないことがあります。
このような事態に発展した場合、遺言を書く人の立場からすると、遺言は法的には有効であっても、実際には効果がない状況に陥ることも想定されます。

相続争いの図
遺言の内容で争いの元になることも…

この問題に対処するためには、遺言の内容について財産の分配に偏りがないか、相続人間で紛争を引き起こすような内容になっていないかなど、慎重に考えることが大切です。

私の場合、財産の分配で争いになりそうなところはなかったので、この問題についてもクリアできました。

ただし、遺言の内容に関しては、自筆証書遺言保管制度では確認されません。
もし、遺産の分配で争いが予想される遺言を残したい場合は、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
また、税金の関連で不安がある場合は、税理士にも相談することができます。

3.遺言者の意思確認の問題

遺言をした人が、「本当に自分の意思で遺言をしたのか」という問題です。
亡くなった後には本人が主張することができないため、遺言した人の本当の意思が遺言書に反映されているかを巡って争いになることがあります。

この問題は意外にも「公正証書遺言」で起きることがあります。

公正証書遺言の作成は、公証人が遺言の内容を遺言をする本人に読み聞かせ、本人がその内容で「間違いないです」と口頭で述べる流れで行われます。
この時に、「間違いないです」と本当に言ったのか?ただ、うなずいただけではないかといったところで「無効」となることがあるのです。

一方で、自筆証書遺言においては、法務局への預け入れ(自筆証書遺言保管制度)を利用することでこの問題を回避できるかもしれません。

私見になりますが、法務局への預け入れは、当日の予約を含め必ず本人が行う必要があります。遺言を自ら書くことはもちろんのこと、予約して預けに行くといった一連の手続きをすべて本人が行うため、より本人の意思の存在が明確と言えるでしょう。
意思確認においては、公正証書よりもむしろ自筆証書遺言+保管制度の利用の方が良いのではと思っています。

自筆証書遺言は何度でも書き直せる

更に「自筆証書遺言で書こう」と決め手になった理由があります。
それは、何度でも書き直しがきくということです。

私は遺言の内容について真剣に考えましたが、すべての財産について一度に決めることが出来ませんでした。
Aの口座は事業で使用しており、後任の○○さんに、Bの口座については…とあれこれ考えるうちに、何も進展しなくなってしまったのです。

最初は「すべてを一度に決めなければならない」という思い込みがありましたが、後に気づいたことがありました。
それは、遺言のコストを比較すると、自筆証書遺言の方が公正証書遺言よりも格段に経済的であることです。

公正証書遺言の場合、財産の価値によっては最低で36,000円かかります。それに対して、自筆証書遺言の保管コストは3,900円で、保管をやめる際のコストはかかりません。
つまり、公正証書遺言1回分のコストで、自筆証書遺言は9回分書ける計算です。

このことから、すべてを一度に決めなくても良いと気付きました。
確実に引き継ぎ先が決まっている財産に関する遺言をまず行い、その後は悩んでいる財産について決断がつくたびに遺言を書く方法を取ることにしました。

もちろん、公正証書でも同様の方法は取れますが、その場合はコストや手間が増えてしまいます。
一度ですべてを決めることが難しい場合、自筆証書遺言を用いて少しずつ遺言をまとめるというアプローチも実用的かと思います。

まとめ

以上、私が自筆証書遺言で遺言書を書いた理由をご紹介しました。

今回の記事を読むまでは、なんとなく「公正証書遺言」が間違いなさそうと思っていた方も多いのではないでしょうか。

実際に遺言を書き始めると分かることですが、自分の死後のことをたった一回の遺言で書ききることは難しいと思います。

遺言した時はこの財産の分け方がベストだと思っていても、時が経てば考え方も変わってくることもあります。

いきなりすべてをやり切るというよりかは、柔軟に、できるところから遺言するというスタイルも良いのではないかと思います。

皆様が遺言を作るにあたっての一つの考え方として参考にして頂けたら、幸いです。


執筆者-大﨑菜穂子
なほ税理士事務所
みやび相続支援機構
税理士・行政書士


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